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切通理作
2017.8.1 14:11

「無垢さ」の政治利用

  僕が十代の時、乱塾時代と言われ、親のエゴのために受験戦争に駆り出される子どもはかわいそうだという論調がありました。

 しかし当の子どもたちは、友だちと一緒の塾に通うのが楽しみであり、そこで少し区域のズレた子と友だちになったりも出来ました。また「ファンシー文具」などのアイテムがブームになったのは、塾に通う子どもどうしの話題のツールになり得た事が大きかったという分析もあります。

 

 そしていま、東京オリンピックの手伝いに、子どもたちを全員参加で駆り出すということが都の有識者会議により提案されており、それに対して「学徒動員」などと言って危惧する声もあります。

 しかし、子どもたちにとって、オリンピックの準備に協力したというのは、同世代の友だちと共有できる思い出作りとして、決して悪いものじゃないでしょう。

 

 と同時に、原発事故後の日本の「状況はコントロールされている」という言い訳の楯に子どもたちが使われるのだとすれば、心穏やかになれないのも事実です。

 

 森友学園の子どもたちのコールが安倍夫人を涙させたように、権力者の自己陶酔に子どもたちの「無垢さ」は利用されやすい。そこには警戒が必要です。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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