12月21日、民進党が「皇位継承等に関する論点整理」を発表した。
冒頭、8月8日の天皇陛下のお言葉の締め括りに
「国民の理解を得られることを、切に願っています」
とおっしゃったのを「極めて重く受け止めることが、我々の議論の
起点である」と明言している。
実に謙虚かつ誠実。
政府が設けた有識者会議が殆ど見当外れな議論に終始しているのとは、
大違い。
主な主張は以下の通り。
「(8月8日の)陛下のおことばは、内閣が責任を負う
一般行政事務の一環として、内閣の了解を得て発せられている。
この事実については、秋篠宮殿下が、平成28年11月30日に
公表された記者会見におけるご回答でも明確に触れておられた。
したがって、率先しておことばを受け止め、真正面から対策を講じる
べき内閣の下で、陛下のお気持ちに反した議論が展開されていることを
強く憂慮する」
「ご高齢等で、象徴天皇のお務めが果たせなくなった場合、
一定条件の下に退位を認める制度を整備することが憲法規定、
天皇陛下の問いかけに合致する」
「公務の負担軽減のみでは万全の対応はできない。
憲法が期待し、天皇陛下が体現してこられた能動的な象徴性を
確保できなくなる」
「摂政を置けば良いという主張がある。
しかし、その場合も、天皇は象徴としての立場にとどまる。
したがって、象徴としての行為を摂政が代行することはできない。
摂政を設けることは、天皇陛下の当事者としての資格を否定するもので
あり、ご健在な陛下に対して、非礼にあたる」
「憲法第2条は、『皇位』の『継承』について、特に『皇室典範の
定めるところにより』とし、皇室典範によることを要請している。
したがって、特例法によることは、天皇の退位に違憲の疑いを
生じさせる。
退位に違憲の疑いが生じれば、ひいては、次の天皇の即位にも
違憲の疑いが生じる。
『日本国』及び『日本国民統合』の象徴である天皇存在に違憲の疑い
があれば、違憲の疑いのある天皇の召集した国会にも違憲の疑いが生じ
る等、国家秩序の正統性の根幹を揺るがす」
「憲法第41条が要請する、法律の一般性の原則を貫くべきである。
特例法は『その天皇固有の問題がある』という判断につながり、適切
でない。
と同時に、時の政権与党による恣意的運用の危険性を排除できない」
「皇室典範の中に特例法の根拠規定を設ければよいとの議論もあるが、
形式的に『皇室典範』を改正しても、実質的には特例法に全面的に委ね
ることになり、憲法第2条の趣旨を潜脱する。
また、上記『法の一般性原則』に抵触して、時の政権与党による
恣意的な運用の危険性を排除できない点においてもまったく同様で
あり、許されない」
「(典範の)改正を退位に絞れば…必要となる改正条文数はせいぜい
10条以下であり、また、皇室典範改正でも、特例法でも、改正すべき
事項と数はほぼ変わらない。
したがって、皇室典範改正によると、特例法に比して特に長期の時間
及び膨大な作業が必要との指摘はまったくあたらない」
「特例法によることと皇室典範改正によることとの重大な相違点は、
特例法による場合、退位の安定性を確保するために欠かせない要件と
手続きを恒久的に定めることができないという重大な欠陥を免れない」
「高齢化や女性皇族のご結婚に伴う皇籍離脱により、天皇陛下及び
特定の皇族方にご公務が集中し、皇室のご活動の維持や皇位継承資格者
の確保に困難が生じることへの対応が速やかに検討なされなければなら
ない」
「女性皇族がご結婚後も皇族の身分を保持し、当該女性皇族を当主と
する宮家の創設が可能となるよう皇室典範を改正すべきだと考える。
また、皇位継承資格について、女性や女系の皇族に拡大することに
ついても国民的な議論を喚起していくべきと考える」
極めて全うな主張だ。
安倍政権が天皇陛下のお気持ちに反し、民意に背を向け、
憲法に抵触する方向にひた走りに走っているのに、やっとブレーキを
かけられる可能性が出てきた。
こんな時こそ野党が存在意義を発揮すべきだ。
ところが、安倍首相は「政争の具にしてはならない」
なんぞとほざいて、正論を押し潰そうとしている。
ふざけた話だ。
民進党が好きか嫌いかではない。
恭しく陛下のお気持ちに添おうとするのか、
それとも不遜に背くのか。
それが問われている。
なお12月22日はBS11の午後8時59分から9時49分迄の
番組「報道ライブINsideOUT」にゲスト出演。
天皇陛下のお言葉の真意、多忙を極める「ご公務」スケジュール、
「生前退位」を巡る議論の行方等を取り上げる予定。
23日は大阪の読売テレビで「そこまで言って委員会NP」の収録。
徹底討論「天皇・皇室を考える」というテーマで、ゲストは所功氏、
百地章氏と私。
放送は来年1月15日午後1時半から3時。
この日、例年は皇居で天皇誕生日の一般参賀に加わっている。
今年はやむを得ない。
ご譲位の為、12月23日の天皇誕生日は恐らく来年が最後のはず。
ぜひ参賀に参らねば。