ゴー宣DOJO

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高森明勅
2016.10.15 01:00

門弟M兄の「正論」

MLと言えば、我々の世代なら普通にマルクス&レーニンの略称
と考える(って私だけ?)。

でもイマドキの日本ではメーリングリストなるものの略称らしい。

そのメーリングリストとやらについては、
アナログ人間の私は一切、関知しない。

関知しないが、ゴー宣道場の門弟もメーリングリストを
やっているとか。

そのメーリングリストに、気になる「提言」があると、

小林よしのりさんからわざわざメールを転送して戴いた。

中身を見ると、10月の道場で質問してくれたM兄の真面目な“
異論”。

小林さんのご厚意に感謝。

実は当日、M兄には道場が始まる前に私の改正案に
「アドバイスして下さい」
とお願いしていた。

それを真剣に受け止めて、道場第2部で的確な質問をしてくれた。

今回のメールはそれを更に補強されている。

その誠意に改めて深く感謝する。

簡単に私なり感想を述べておこう。

まず、あの改正案は当日にもお断りしたように
今後も皇室が存続して戴く為に必要で、かつ実現可能な“最低限”
の改正」にとどめている。

その上、これも当日に断った通り、客観的な事情に規定されて、
“妥協的”な性格を免れていない。

それは具体的には、特に王と女王の位置付
けに露呈していることも
当日、説明した。

従って、M兄が皇族の増加に歯止めをかける仕組みは必要ながら、
それを男女で線引きするのは適切ではない、皇位継承順位で王と女王
を同等としながら、
皇籍離脱で差を設けるのは辻褄が合わないと
指摘されているのは、
全く正しい。

更に増加対策として3つの“対案”を示されているのは、
M兄がこの件について誠実に思考を巡らされている証拠だ。

但し、第11条第2項にある「やむを得ない特別の事由」による
離脱は、
なるべく適用しないのが望ましい。

王・女王は第1子限定で皇室に留まるというルールも、
些か不自然かつ窮屈すぎないか、不安を拭えない。

やはり、永世皇族制を見直すのが「王道」だろう。

いずれ危機を脱して、皇室の存続にしっかりメドが立てば、
その改正に着手すべきだ。

だが、今はその時ではあるまい。

眞子内親王殿下、佳子内親王殿下のお子様方については、
皇室の安定的な存続の為に、女王も「やむを得ない特別の事由」
適用して当然、皇室に留まって戴く必要がある。

私の改正案が女王について「但し」書きを加えたのは、
この点にも配慮した為だった(さすがに岸端女史は気付かれたようだ
が)。

「やむを得ない特別の事由」の適用の仕方は、「離脱」には抑制的、
逆の場合はより柔軟にするのが望ましい。

いずれにしても、王・女王の皇籍離脱についても、両者を同等に
位置付けるべしとのM兄の指摘は、まさに正論。

その意味で、私の改正案は「不純」な内容になっている。

その事実は、別に殊更“自虐的”になる訳ではなく、
将来の是正を
織り込んで草案を書いた立場から、
私自身が改めて強調しておきたい。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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