『君の名は。』が予告編を見たときから気になっていた。
昭和28年頃に国民的大ヒットとなったメロドラマと
同じタイトルを使って、現代に甦らせたいものとは何
だろう?
公開されると凄い瞬発力で観客を増やして、あっという
間に『シン・ゴジラ』を超える勢いの大ヒットになって
いるようで、気になってとうとう見に行ってしまった。
アニメは基本的に嫌いだし、監督がオタク系の作風だと
聞いていたから、それならなお苦手かもと思っていたが、
なんと全然オタクな映画ではなかった。
『君の名は』『時をかける少女』『転校生』などの過去の名作
のエッセンスが、巧みに組み合わされ、SF的な要素が日常に
溶け込んでしまっている。
宮崎駿のような絵柄のオリジナリティはないし、芸術的な
ひとりよがりもないので、退屈になりかねない作品だが、
それでも展開の絶妙さと、絵の美しさに魅せられて、
あっという間に見終わってしまった。
ちゃんと戦後の名作『君の名は』のすれ違いの要素も取り
入れてあるし、現代の少女たちがこれにキュンキュンする
だろうことも十分に分かる。
今の少年少女、あるいは若者は、真知子巻きの『君の名は』
を全然知らないだろうし、『転校生』も『時をかける少女』
も知らない者が多くなっているだろう。
過去の名作のコンテンツを再利用して、現代のテクニックと
感性でよみがえらせるというのは、伝統の継承として正しい
方法論だ。
永遠に継承される魂はあるのであって、伝統は現代の社会
の中に常に内在させなければならない。