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高森明勅
2016.9.8 01:00

個と公

人は確立した主体性を備え、その「個」が強固であるほど、
明確な覚悟と責任感を持って「公」を支えることができる。

そうでなければ私心、私情に足を取られ、
ややもすれば衆愚に埋没してしまう。

この度の天皇陛下のお言葉ほど、
その事実を改めて痛感させた例は
他にないだろう。

陛下がいかに強靭かつ堅固な
主体性を備えておられるか。

一億を超える国民と真正面から対峙して、
それを圧倒し去るほど確固たる「個」を持つ人物など、
陛下以外に想像もできない。

圧倒的なまでに強烈な個人性を持つが故にこそ、
ご自身を自覚的に「公」に捧げ尽くし、徹底して「無私」。

だからこそ、余人には到底真似し難い高貴な勇気を、
自然体で発揮することができる。

普通に考えても、先のビデオメッセージによるご譲位への
断固たる意思表明など、
よほど並外れた勇気がなくては、
とても出来ない。

しかも、それを全く感じさせないほど自然体であられた。

陛下の勇気が比較を絶したレベルだからだ。

その陛下と比べるのは気の毒だが、現在の政治指導者、
安倍首相は「一強多弱」などと囁かれながら、余りにも“ひ弱”
見える。

だが、陛下のお気持ちが全国民の前で明らかになり、
更にそれを全面的に受け入れる国民の意思も明確になった以上、
安倍首相は私心、私情をほんの僅かでも抑え、己れの保身のみを
考えるのではなく、国の為、国民の為、
皇室の為、公の為に、
決して誤魔化すことなく真摯に誠実に、
陛下のお気持ちに全力で
お応えする「覚悟」を持たねばならない。

それは、陛下の万分の一、
億分の一の勇気を
振り絞ることさえできれば、
いとも容易いことであるはずだ。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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