『正論』9月号に「譲位の御意向」を巡る特集。
執筆者は上智大学名誉教授の渡部昇一氏、麗澤大学教授の八木秀次氏、
作家の竹田恒泰氏、皇室ジャーナリストの久能靖氏、
皇學館大学教授の新田均氏。
これら方々の中で、明確に「摂政」設置を主張するのは、
渡部・八木両氏。
今の陛下に対し、摂政の設置を唱えるのは底無しの無知か、
不敬の極み。
もう、それだけでアウトだろう。
お2人は「もし譲位ということになると、元号も変えなければならず、
そのことも詳しく検討しなければなりません」(渡部氏)、
「譲位・退位されれば、元号も変わり、国民生活にも大きな影響を
及ぼす。天皇陛下も大きな混乱は望まれていないだろう」(八木氏)
などと。
だが、先に紹介したように、既に改元の準備は整っている。
改元で「国民生活に…大きな混乱」って、何の話か。
驚くべき妄想と言う他ない。
八木氏は摂政設置の他に
「単純にご公務を大幅に軽減するという案もある。
…(それが)本当の意味で陛下のご意向にかなうのではないか」
などとも。
呆れ果てる。
それがお嫌だからこそ、譲位のご意向をお持ちなのに。
その陛下の思し召しの真逆が「本当の意味で…」とは何事か。
竹田氏いわく「天皇陛下の譲位の御意向は、とても自然なことと
共感し理解した者が多かったのではないか」と。
先の二者より全う。
だが譲位を可能にする為に、典範には手を着けず、
「あくまでも一代限りの特措法によって対応するのが上策」と。
この人物、以前は憲法学者を名乗っていた時期もあったと記憶する。
だが、憲法を読んでいないのか。
第2条には「皇位は…皇室典範の定めるところにより、
これを継承する」とある。
ならば、皇位継承の在り方に(譲位という)“新たなルール”を
追加する以上、典範改正以外のやり方は憲法違反。
なお、同氏のプロフィールに「旧皇族・竹田家に生まれる」と
あるのは、改めて言う迄もなく間違い。
氏が生まれた竹田恒和家は、他の竹田家(恒正家、恒治家)と違い、
当主の恒和氏は生まれた時から皇籍を持たない国民。
だから、「旧皇族・竹田家」とあるのは明らかに虚偽。
単なるケアレスミスでは済まない。
皇室への非礼に当たる。
久能氏は「天皇陛下が生前退位のご意向をお持ちだという報道を
聞いた時、私は何の不自然さも感じませんでした」と述べ、
以下のように指摘。
「これは私の推測に過ぎませんが、生前退位のご意向の底には、
将来の皇室のための議論が進まぬことに、お苛立ちがあったのかも
しれない。少なくとも、国会も政府も今回のことを機会に、
将来のための皇室典範改正に早急に取り組まなければなりません」と。
新田氏は―
「報道の背景に、御公務を、天皇という地位との関係で、
極めて大切なものとして受け止めておられる陛下のお考えがあること
だけは間違いなさそうだ」と。
「譲位」そのものには立ち入っていない。
それにしても、近所の書店の雑誌コーナーを覗くと、
『月刊Hanada』や『WiLL』がドーンと平積みになっている
一方、『正論』は発売日なのに棚に2冊、差してあるだけ。
寂しい。