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小林よしのり
2016.8.1 05:14日々の出来事

「シン・ゴジラ」こんな感想が一人いる


今からわしが描く「シン・ゴジラ」の批評は、「ネタバレ」

充満だから、まだ観てない人、観ようと思っている人は、

絶対読まない方がいい。

注意喚起しておく。「ネタバレ」だぞ。「ネタバレ」!

 

「シン・ゴジラ」はレビューでは大好評のようだ。

だがわしは期待が大きすぎたのか、失望してしまった。

そこでトッキーの評価を聴いてみたら、やっぱり高評価

だった。

 

人は幼いころ観たゴジラのどこに魅力を覚えたか、自分が

育っていくうちに、ゴジラに何を求めるようになったか、

各人全然違ってしまう。

だから、どんな感想があってもいいのだ。

正しい感想なんかない。

 

わしの期待したゴジラの見せ方と、作品としてのゴジラ

への期待が「シン・ゴジラ」では両方裏切られた。

 

第一に、官僚VSゴジラの構図が感情移入できない。

あの政治家や官僚のペラペラ早口は退屈すぎて、聞いて

いられない。

まるで緊急事態法が必要と言っているようで、政治的すぎる。

いくら緊急事態の法整備が現代の日本に出来てないからと

言っても、危機を前にしてあれほど政治家や官僚が硬直した

議論をするとは思えない。

 

第二に、アメリカ帰りの女性の実在感がなくて笑ってしまう。

ガッジーラなんて言わなくてもいい。

 

第三に、あんな姿の芋虫がゴジラになってはいけない。

あんな変態をもしハリウッドがやったらボロクソに文句言った

はずである。

本家・日本があんな反則をやって、日本人が許すのは疑問だ。

ゴジラは初めからゴジラの姿で出現しなければならない。

なぜなら、「神秘性」が失われるからだ。

 

第四に、あんな無敵の光線が出るようになってもいけない。

どんどんハイパーになっていったら、いずれ翼が生えて飛ぶ

こともアリになってしまう。

 

第五に、超絶な力を持つゴジラに対して、あんなに原始的な

攻撃でぶっ倒して、しかもその隙に口から凝固剤注入なんて、

そんな幼稚な作戦が成功するわけがない。

 

第六に、多国籍軍の核攻撃という緊迫感が全然伝わらない。

 

第七に、突っ立ったまま終わるというのが、まるで原発を

暗示しているようでシラケる。

 

第八に、大人向けの映画になり過ぎていて、新たな子供の

ファンを増やせない。

 

第九に、ゴジラの心理的な怖さを感じない。

 

こう書くと、ボロクソな評価だが、まったく一個人の評価

なので無視してくれ。

ゴジラを語ると、クソマニアがぎゃんぎゃん言って来るので、

ウザい。

一人、一人、別々の感想があってよい。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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