ゴー宣DOJO

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小林よしのり
2016.6.17 00:41日々の出来事

「実感」と「情報」について


昨日、用事があって銀座に行ったが、みすぼらしい街になった。

一昔前には銀座にはオシャレな大人が多くて、誰でもそれなり

に身なりに気を付けなければならなかった。

だが今はそんなファッションに気合の入った大人が全然いなく

なってしまった。

 

一番目立つのは外国人観光客で、Tシャツと短パンで、

リュックを背負い、たらたら歩いている。

外国人の中に日本人を見つけても、地味で安っぽい服しか着て

なくて、情けないことに、中国人・韓国人と見分けがつかなく

なってきている。

華のない大人ばっかりで、わし自身がやけに目立って浮いて

しまう有り様だ。

銀座に行くと、わしがマイノリティーになってしまった。

 

バブルの時代じゃなくても、銀座は大人の街というイメージは

定着してた気がする。

わしが子供の頃は、大人たちの間で、「有楽町で逢いましょう」

とか「銀座の恋の物語」という歌が流行っていたが、そんな

大人のラブロマンスが生まれそうな雰囲気は、もう完全に

過去のもののようだ。

 

メンズもレディースもファッション店は人が入っていなくて

大変そうだ。

客がいないから、店内を見ているだけでも、店員がすごく

丁寧で、何も買わなくても帰り際は、わしを追って来て、

頭を下げて見送ってくれる。

なんだか恐縮するのだが、潰れないかなと心配してしまう。

 

最近は服を買う人自体が相当減ったような気がする。

行きつけの店からは、ぜひいらしてくださいという電話や、

丁寧な案内の手紙が頻繁に来る。

その様子も最近、必死の勧誘で、売り上げが伸びなくて困って

いるようだ。

人々の美意識がどんどん後退するので、デザイナーは苦しい

時代だろう。

 

わしが経済評論家というものを信用しないのは、わし自身の

「実感」に自信があるからだ。

アベノミクスで景気が良くなる、金融緩和で一般人まで

富が降りて来ると、マスコミや経済評論家は言っていたが、

わしは全く信用しなかった。

真っ先に「ゴー宣道場」で、わざわざホワイトボードに

図を描きながら、それが嘘だと説明したものだ。

「実感」を失った大衆は、あっという間に政府や、マスコミや

経済評論家に洗脳されてしまう。

 

だがわしは「実感」に自信がある。

わしの妻は買い物に行って、現在の店の様子や物価を報告

してくれるし、よしりん企画では、時浦が毎日食事を作って

いるのだし、親戚の姪たちは母親になったが、専業主婦が

いなくて、みんな働きながら、子育てをしている。

わしは富裕層から貧困層までを観察しているから、社会の

変化を「実感」で把握している。

 

最近は「庶民」が「大衆」化してしまったから、この「実感」

が鈍磨してしまった者だらけだ。

まずは「実感」であり、「情報」はそれを裏付けるものに

過ぎない。

「情報」に「実感」を合わせる馬鹿は、権力に操作される

「羊」となって断崖絶壁から次々に飛び降りるがいい。

 

庶民は「実感」で生きているから信用できる。

大衆は「情報」で生きているから信用してはならない。

 

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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