私は岡山県の出身。
だから小中学生の頃、教室で隣の広島の原爆投下による惨状を、
嫌というほど聞かされた。
だが語られるのは、決まって次の図式。
広島・長崎への原爆投下の悲劇は、日本の軍国主義のせい。
だから、それを反省して平和憲法を守ろう、と。
原爆も憲法も、アメリカからの理不尽かつ無慈悲な「拳骨」、
とは教えて貰えなかった。
でも子供心に、私はこう思っていた。
「見ていろ、アメリカめ。いつか必ず仕返ししてやる」と。
残念ながら、同じ気持ちを共有してくれる友人は余りいなかったが。
後年、ある知人が、在日米軍の司令官と酒を酌み交わした時の、
興味深い話をしてくれた。
その司令官は、アメリカによる原爆投下をどう思っているか、
率直に尋ねたらしい。
その時、彼はこんな答え方をした。
「勿論、断じて許せない。絶対仕返ししてやりたい。
だけどアメリカは今、同盟国だから我慢して、仕返しはしないで
やるよ」と。
それを聞いて相手は、こんな感想を述べたという。
「それが本当の気持ちだろうな。
これまで、どの日本人にこの質問をしても皆、
“もう昔のことだから気にしていない”などと答えた。
そんなはずはない。やっと日本人の正直な気持ちを聞くことが出来て、
安心した。あれだけのことをやられて仕返しをしようとも思わない
腰抜けなら、とても同盟国として一緒にやっていけない」と。
しかし残念ながら、同胞の女性が米軍関係者に惨殺されても、
「タイミングが悪い」とか当のアメリカに気を使っているような、
情けない国に成り下がっているのが、偽らざる現実。
こんなザマでは、野蛮な核保有国に、あの国はもう1度、
核を落とされても、ヘラヘラ笑っているだけだから大丈夫、
と見くびられるても仕方がない。