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笹幸恵
2016.5.20 14:25

ぞめきの消えた夏

アトリエッジという演劇集団のお芝居

「ぞめきの消えた夏」を観てきました。

 

「ぞめき」とは、阿波踊りのお囃子のこと。

戦時中、阿波踊りは禁止され、

「ぞめき」が消えました。

 

舞台の中心となるのは、グアムで戦う徳島の聯隊。

阿波踊りをなつかしむ兵士たち。

その戦場で交錯する現代――老いた兵士の家族たち。

ある人物を通して、少しずつその関係性が詳らかになっていきます。

 

何といっても、兵士たちの躍動感がすごかったです。

中途半端な優しさなど何の役にも立たない戦場での、

荒々しいぶつかり合い。

最初は誰が誰だか区別もつかないのだけど、

いつの間にか、会話や立ち居振る舞いから

それぞれのキャラクターが浮き彫りになって、

でもその途端に彼らは敵弾で死んでいく。

これでもか、これでもか、というくらい、

死の場面が繰り広げられていきます。

そこには死の意味を問う暇すらありません。

下手に意味を持たせたりなんかしたら、

その戦場は途端に陳腐になるように思います。

 

武士の末裔だという兵士が「誇りある死に方で」と

切腹したのですが、これが圧巻でした。

今の若い人でも、こんなふうに表現できるんだあと

素人ながらに目を見張りました。

また、彼らの魂を象徴する「黒蝶」の女性の

美しく神秘的なことといったらありません。

演出の妙だなあ。

 

伝えたいことはいたってシンプル。

あなたたちのことを、わたしたちは

決して忘れません。

それだけ。

だからなんだかとても清々しく感じるのです。

 

時間を忘れて見入ってしまいました。

私は何度かこのお芝居を観ているのですが、

今年が最高!!!

今日が最終日だと思っていましたが、
土日までやっているようなので、
興味のある方はぜひ!

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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