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小林よしのり
2016.5.1 02:50政治

憲法改正に関する状況分析


安倍政権で改憲「反対」が、共同通信社の世論調査で56%だという。

賛成は334%だから、改憲反対が大きく上回っている。

 

参院選で集団的自衛権の行使を容認する安保法制を判断材料にするか、

という質問には「する」が595%で、「しない」が353%だという。

これに関しては、世論調査は建て前しか出ていない気がする。

北海道5区では結局、与党が勝ったからだ。

接戦のカギになったのは、安保法制ではないだろう。

安保法制を廃止しろとか、見直せという要求は、それほど真剣に

国民の間にはないと、わしは見る。

成立した時点で過去のことになってしまったのだ。

 

わしは自主防衛が目標だから安保法制に反対していたのだが、

成立した以上は、自衛隊員が国際法で守られるように、憲法改正を

目指すことになる。

 

だが、国民の大多数の本音は、安保法制で集団的自衛権まで容認

してしまったのだから、もうこれ以上はいいじゃないかという

感覚になる。

アメリカが守ってくれるのならそれでいいというのが、国民の

本音だから、安保法制はますます国民の依頼心を確固たるものに

してしまった。

 

さらに問題なのは、自民党の憲法改正草案である。

あの内容は本当にデタラメで、改憲派であるわしも、賛成するには

抵抗感がある。

「個人」を消して、「人」にしたという意図も、憲法に「個人」と

書いてあるから、日本には個人主義が蔓延したと櫻井よしこや

百地章が言っているが、あまりにも幼稚だ。

 

まず「個人主義」と「利己主義・私人主義」を分けなければならない。

「個人主義」は悪いことではない。わしも「個人主義」だ。

 

次に、憲法の「個人」の二文字で、国民が「利己主義」になる

という言い分は阿呆と言うしかない。

誰が憲法をしっかり読み込んで、「個人」と書いてあるから、

国や公を無視して「利己主義」になろうと思うのか?

国民が憲法に影響されるはずがない。

 

そもそも憲法は「国民が権力を縛る」のだから、本来、憲法を

読み込んでいなければならないのは、権力者の方なのだ。

憲法の文面で国民を縛ろうとする自称保守派、改憲派の理屈が

酷すぎて、とても国民を説得できない。

 

自称保守派は自ら改憲を不可能な方向に導いてしまっている

から、話にならないのである。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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