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小林よしのり
2016.4.4 03:39メディア

不倫を攻撃する若い世代


最近、異様なまでに「不倫」に対する世間の目が厳しいと思う。

育休なんて言ってた国会議員が、妻の出産前に不倫していたとか、

その上、国会議員の仕事は合コンとしか思ってないなどという、

明白な「公私混同」は当然責められるべきだろう。

国民は国会議員を不倫させるために税金払ってるわけじゃない。

 

ゲスの極みのボーカルのように、不倫相手を正月に実家に連れていく

というのも、不倫が本来、忍ぶ恋だというルールを逸脱しすぎている

ので、非難されるだろう。

 

そもそも不倫は一般的には肯定されるものでも、共感されるものでも

ない。それは原則だ。

だが、それにしても、最近の不倫すべてを糾弾する風潮は異常だと

思う。

 

昔から歌謡曲では不倫を題材にした名曲が次々に生まれていた。

テレサテンの「愛人」「時の流れに身をまかせ」「空港」「つぐない」、

竹内まりやの「シングルアゲイン」「マンハッタン・キス」そして

「純愛ラプソディ」、

久保田利伸の「Missinng」は超名曲だった。

浜田省吾の「紫陽花のうた」「陽のあたる場所」などはよく歌った。

サザンオールスターズの「LOVE AFFAIR」は大好きな曲だ。

小林明子の「恋に落ちて」、一青窈の「ハナミズキ」、そして

JUJUの「この夜を止めてよ」等々、不倫を題材にした名曲は

まだまだある。

 

不倫こそが本当の恋愛だと言ってもいいくらい、それらの曲は

切なくて美しい。

恋愛は障害があって燃えるものだから、現代では「許されぬ恋」と

しての「不倫は文化だ」という言葉はあながち間違いではない。

むしろ不倫を題材にした歌が出なくなったから、歌謡曲がここまで

衰退したのではないかと思えるほどだ。

 

最近の風潮では、若者ほど「不倫」や「反体制」を責めるそうである。

ある意味、保守化していると言われるのだろう。

つまらない保守化だ。

千田有紀という社会学者の意見では、若者にとって「不倫」は結婚

という「特権」を持った者たちによる、未婚者の性的自由への

越権行為になるらしい。

「反体制」についても、サラリーマンになれない若者たちの、

「反体制とか気楽に言えた世代の大人って楽でいいよな」という

反発から生まれていると分析している。

なるほど、勉強になる。

 

格差が拡大するばかりで、20代の半数が貯蓄額0のままだという。

結婚もできない、正社員にもなれない若い世代のルサンチマンが、

大人に対して反抗する世論が、不倫バッシングに繋がっているの

かもしれない。

つまらない時代になったものだ。

このつまらない時代を作ったのは、もちろん安倍政権である。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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