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笹幸恵
2016.2.7 06:16

父祖の尊厳か、安全保障か

『正論』3月号の秦郁彦先生と

産経新聞の阿比留瑠比記者の対談記事、

私も読みました。

全体的に、秦先生の質問に対して

阿比留記者は日韓合意を何とか擁護しようと

支離滅裂になっている印象を受けました。

 

たとえば、米国の圧力があったのではないか、という

見方があるとの秦先生の問題提起に対して。

 

アメリカは韓国を見切っている。

日本を頼りにするようになってきている。

だから今回の合意は、アメリカの圧力というより、

韓国に対する日米の連携といったほうが正しい。

という主旨の発言をしていました。

 

ううーーむ。

確かに「これは連携だ!」といえば、

名目上は何でもかんでも連携になりそう。

 

でもなあ、なんか、ホレた男に言いくるめられて、

「彼はあたしを頼りにしているの。

あたしは、その愛に応えたいの。

応えられるのはあたししかいないの。

たとえ10億円の身銭を切ったって、

安いもんだわ!」

と言っているような・・・。

 

 

しかも身銭を切るだけじゃありません。

その「連携」のために、

父祖たちに濡れ衣を着せて良いのか、となると

話は別ではないかと思います。

「やっぱり日本に非があった」と国際社会で

認識されるようになったのですから、

これを翻すのは本当に大変です。

いえ、もうほとんど不可能かもしれません。

 

父祖たちの尊厳より、今を生きる私達の安全保障のほうが

大事だと思う人もいるかもしれません。

でも、果たして本当にそうでしょうか。

 

安全保障を優先した結果、この国の歴史が、国柄が、

父祖の思いがないがしろにされてしまえば、

果たして守るべき価値など、この世に存在するでしょうか。

 

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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