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小林よしのり
2015.9.12 02:19政治

デモはデモクラシーの略ではない


わしは安保法案には反対である。

だが、国会前のデモ集団と、わしの考えには実は深い溝がある。

彼らは「立憲主義」と言っているが、本音は単純な「反戦平和」

のサヨクであり、「憲法9条護持」の者たちだ。

わしが最も違和感を覚えるのは、あのデモ集団や、そこに参加

する知識人・著名人たちは、「デモこそが民主主義」と勘違い

していることである。

 

週刊朝日の北原みのりのレポートを読むと、デモの中で

シュプレヒコールが起こり、「民主主義って何だ!」と叫ぶと、

これだ!」と応えると言う。

やっぱり馬鹿なのだ。

「デモ」を「デモクラシー」の「デモ」と同じだと思っている

のだろう。

 

「デモクラシー」は「デモ」+「クラシ―」であって、

「民衆」の「統制・支配」のことである。

 

だが「デモンストレーション」は「」+「モンストレーション

であって、「強い」+「示威行動」のことだ。

 

「デモ・クラシ―」と「デ・モンストレーション」は違う。

 

国会前に集まって鳴り物入りで抗議の声を上げるというのは、

いわば「脅迫」である。

「モンストーレ」というのは「モンスター」の語源である。

怪物と化した群衆が、怒声を上げ、騒音を出して、

間接民主主義を「脅迫」しているのだ。

ではあのデモ集団は、直接民主主義を望んでいるのか?

小熊英二などもやたらデモに感情移入しているが、直接民主制

を支持しているのだろうか?

 

わしは、デモこそが民主主義と妄信する連中とは、やはり一線を

画す!

わしも20年前、薬害エイズ運動でデモを煽ったが、あれは

薬害エイズの被害者である子供たちが、次々に死んでいくという

切羽詰まった状況で、やむおえず「情の連帯」と大義を立て、

行動したものだ。

 

すでに被害を受け、死んでいく子供がいた薬害エイズ運動と、

まだ被害はなく、被害があるか否かは人によって予測が違う

安保法制反対運動では、切迫感も当事者意識も大きな隔たりが

ある。

安保法制はイデオロギー闘争の側面が強い。

 

この手の問題は冷静に「議論」すべきであって、大騒ぎのデモに

頼るべきではない。

「デモ」は脅迫である。

「議論」こそが民主主義なのだ。

 

ただし、政府与党も結論ありきで、「議論」を

する気がないのは確かだ!

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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