昭和天皇とマッカーサーの第1回会見。
そこで、昭和天皇は自ら戦争責任を負う旨の発言をされたのか、否か。
そうした発言をされた、とする史料の主なものに
マッカーサーの回想録がある。
だがこれは、後年まとめられた文献で、誇張や虚偽も多く含まれる。
これに対し、通訳の奥村勝蔵氏が記した御会見録は
同時代の公式記録だが、そこには責任発言は出てこない。
ならば、そんなご発言はなかった、という意見が出て来ても一先ず、
やむを得ない。
しかし外務省政務局第5課長で、第8回から
昭和天皇・マッカーサー会見の通訳を務めた松井明氏の、
こんな証言がある。
「天皇が一切の戦争責任を一身に負われる旨の発言は、
通訳に当たられた奥村氏に依れば余りの重大さを顧慮し記録から
削除した」と。
その上、マッカーサーから報告を受けた
GHQ政治顧問だったジョージ・アチソンが米国務省に送った
極秘電報には、昭和天皇のご発言の主旨として、
次のように伝えていた。
「(自分は)日本国民の指導者として、
臣民のとったあらゆる行動に責任を持つつもりだ」と。
更に、昭和天皇の責任発言が削除された記録は
外務省の用箋を使っていた(外務省と宮内庁が保管)
のに対し、
それとは別に、宮内省(当時)の用箋を用いた記録が天皇に
提出されていた
(その記録はそのまま天皇のお手元に留められた)。
これを当時の藤田尚徳侍従長が読んでいて、
そこには責任発言がそのまま載せられていた。
他にも、マッカーサーの副官だったバワーズが、
会見直後の深く感動したマッカーサーの姿を目撃していた。
ばかりか、マッカーサーは後日、バワーズにも尊敬をもって
昭和天皇の責任発言を語っていた等々。
予断やイデオロギー的な思い込みを排し、
冷静かつ虚心に関連の諸史料を評価・分析すれば、
自ずと正しい結論は出るはずだ。