ゴー宣DOJO

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切通理作
2015.7.15 02:45

いま読まなくてはならない

昨日はゴー宣ネット道場動画の収録でした。

わが自宅から出がけに、郵便受けをたしかめたら、

ナント!小林さんから小学館さんを通して『卑怯者の島』を送って頂いてました。

 

行きがけの電車の中で読み始めたら止まらなくなり、

収録場所の最寄り駅に着いたらあと20数ページ。

 

普通だったら「後は帰りがけに」と思うところですが、

もはや止まりません。

 

なんと私は、小学生以来の、「歩きながら漫画を読む」という

行為をしてしまいました!

 

小学校の時の私は、自転車に乗りながら漫画を読んでいた

こともあります。

 

いまから思えば、いつ交通事故に遭ってもおかしくなく、おそろしいですが、

それだけ、漫画というものが、なによりも大切で、

「いま吸収しなければならない」エネルギーだったのです。

 

そんな無心な状態に帰れるほど、すごい本でした。

 

「卑怯」という言葉の意味が、どんどんめくり返されていく。

めくり返されながらも、どんな価値相対化も、それは安全圏からの第三者の立場に過ぎないという事も、同時に突き付けられていくのです。

 

「いま、お前がそこに居てそれを決断したとしたら、それは非道と言えるのか」

という問いかけ。

 

そこにタブーはありません。

 

また、戦地の現実にも留まりません。

たとえ<軍神>でも、女性はイキナリ傷痍軍人を愛せるか?という問題も出てきます。

 

作中、印象的に出てくる

「女の愛国心は信用できない」という言葉からは、

基本的に男のみが兵士になるということも

戦争の本質のひとつなのだと思い至らせます。

 

たいていの戦争映画や物語は、女性を銃後の存在として凛として描くか、

あるいは「本当は平和を願っている」優しさの象徴として描きます。

 

そのどちらでもないところから、目をそらさしていない。

 

そして何よりも重要なのは、

彼らは、そして僕らは、

何を守るのか?……ということです。

 

安倍首相は、それをわかっているのだろうか?

国民の目を欺き、ごまかしている、

「いま現在卑怯な者」に、わかるわけがない。

そう思います。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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