横浜で舞台『アドルフに告ぐ』を見た。
手塚治虫の名作を舞台化したものだが、素晴らしい出来だった。
知ってる役者は鶴見辰吾しかいなくて、さすがに安定した演技
を見せてくれた。
3人のアドルフを演じる役者の熱量が凄くて、女優が美しいし、
原作にない少女も印象的だった。
最初から最後まで緊張感が途切れず、見終わってしまった。
この作品のテーマの奥深さを見事に描き切った演出で感動した。
『アドルフに告ぐ』は「週刊文春」に連載されていたが、
当時は壮大なドラマの一端を毎週、垣間見るしかなく、難しい
話だなあと思っていたが、実際連載中はまったく人気がなかった
らしい。
だが編集部が腹を決めて最後まで描かせたから、こんな凄い
作品が生まれたのである。
単行本が発売されたら、表紙カバーが手塚の絵でなく、大人
向けの油絵みたいなものになっていて、驚いたものだ。
わしも現在、大人向けの、社会性や歴史性のある壮大なドラマ
を描いてみたくて、その一つが『大東亜論』だが、7月発売の
『卑怯者の島』もそういう挑戦の一つだ。
『卑怯者の島』はまさに『アドルフに告ぐ』のような大人向け
単行本の表紙にしてほしいと鈴木成一氏に頼んで、デザイン
してもらった。
舞台を見てから『アドルフに告ぐ』をもう一度、読み返して
いるが、やっぱり手塚の表現は上手い。
劇画に負けじと背景を描きこんでいるし、編集者が相当史料を
収集していたらしいから、考証がしっかりしている。
やっぱり編集者の役割は大きいんだよな。
よしりん企画のスタッフ諸君は、この作品を読んだ方がいい。
日曜日に無駄に遊んでいないで、漫画なんだから、このくらい
読みなさい。
わしは絵の描き方が気になって、ページをめくるのが遅くなる
のが辛いところだ。