ゴー宣DOJO

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切通理作
2015.5.11 21:51

「弱いつながり」の恐怖

 

小林さんのライジング、圧倒的でした。

 

SNSでつながる関係が、
「人殺し」も軽い日常会話にしてしまうような、

インスタントな歯止めのなさを持っているという事。

 

少年犯罪が問題視されると

すぐ「数は増えていない」と言う識者が出てきます。

しかし、本当に恐ろしいのは、
直接の実行者だけではないのだという現実。

 

小林さんはバーチャルとリアルの違いを指摘していますが、

これが数年前なら、リアル空間で出会った人間と、

ネットを通して出会った人間との区別は、

その本人にもついていたと思います。

 

たとえば普通の主婦が、ネットの出会い系で

知った相手と浮気したとしても

自分の周囲の日常的な人間関係とは

また別のものという線が引かれていた。

 

しかしラインの普及以降、それがまだら状に入り組んでいて、

リアル発祥とバーチャル発祥の区別が

(頭ではわかっていたとしても)

感覚的に分けられず、

どちらもゆるやかな「仲間」意識の中に

共存している

 

その「仲間」意識は、

日常的にはライン上の単純な言葉によって

確認されるから、人間感情の複雑さや

微妙なニュアンスはカットされ、

そんな単純化される「空気」のノリに

無意識にせよ合わせようとすらしてしまう。

 

もちろんそれでもたいていのことは

大きな問題なくすむのでしょうが、

一人でも極端な行動を取る人間がいたり

そんな単純化された仲間の中でお互い共有する

ストレスを晴らしてくれる行動を起こす人間が出てきた時、

「やっちゃえ!」という気分の方に同調しやすくなり、

理性によって歯止めがかかりにくい

状態になる。

 

年長の人間なら

まだそういうツールがなく

生身の限定された人間関係しか

知らない時間がこれまでの人生の大半だったので、

入り組んでしまった後の関係性の中でも

重さ、軽さを相対化できるかもしれない。

 

しかし、そういうフラットな関係が

既に自明になっている若い世代にとっては

どうでしょうか?

 

東浩紀さんの『弱いつながり』

注文しました。

上記の事を考える時にも

示唆を与えてくれるでしょうか?

 

次回道場の前に、

考えを深めていきたいと思います。

 

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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