例の大作、わしのペン入れはついにあと一本になった。
わしが描かねばならぬ分量が多すぎるから、この作品を
完成させるのは億劫で、ずっと逃げていたのだが、
高森さんや、「SAPIO」の編集者・中澤・酒井両氏に
完成させてほしいと催促され、その気になってしまった。
・・のは良いのだが、毎日毎日描いてるうちに、
ふと脳裏をよぎるこの疑念・・
こんなに厳しい作品が売れるのだろうか?
テレビじゃ朝から晩までチャラチャラ面白おかしい
から騒ぎばっかりやってるし・・
報道ニュース番組もすっかり毒素を抜かれて無難な
コメントばっかりになってしまったし・・
外出したら幸福そうな人々がヘラヘラ歩いているし、
最近できたチーズタルトの店に相変わらず
ずらっと客が並んでるし・・
自民党はちょっとでも自分の気に入らない言葉を
発したマスコミを脅し、なんと野党の政治家にまで、
言論封殺をやり始めたし・・
大衆は安保法制にも、何にも関心持ってないし・・
マスコミはこの「戦争法案」を国民に分かりやすく
知らせようと全然しないし・・
こんなテキトーな時代に、戦場での生死の極限状況を
描いたわしの例の大作が、売れるのだろうか?
まったく見当もつかない。