「ゴー宣道場」熱く終わった。
第一部はガンガン飛ばして濃い議論になったが、第二部は
参加者からの質問に答えながら、笑いを交えたざっくばらんな
ものになった。
ほっと安堵して控室に戻り、門弟が集めてくれたアンケートを
師範方が読んでいるときだった。
この日一番、胆を冷やす出来事が起こった。
小学生の女の子が、自分で書いたアンケートを、母親と共に
控え室に持ってきてくれた。
そのシングルマザーは、以前からかなりクレバーな門弟だと
思っていたが、子供もさすがにハキハキと明瞭にしゃべる
可愛い子に育っている。
母と子とわしの3人で写真を撮るとき、母が緊張してたのか、
恐るべきことを口走った。
「こ、この子は小林先生のDNAを受け継いでおります!」
(は?はあああああ?)
(わし、付き合った?) (わしの子供?)
(し・・してないよね?)
(何でそんなこと言うんだろ?)
(師範方はどう思うわけ?) (聞いてしまったよね?)
ものすごい混乱で師範方の様子を覗うと・・・
高森・切通はアンケートを読んでる振りしたまま、何かを
思っている。
意地の悪いのは泉美さんで、じわあああっと上げた顔には
「聞いてしまったぞ」という不気味な笑みが浮かんでいる。
なんと笹さんも顔を上げて、わしと少女の顔を見比べだした。
こらえきれずにわしは口を開いた。
「い・・いや、今のは誤解を生む発言じゃないかな?」
「おかあたま、DNAは違う意味でしゅよね?」
母親は「『ゴー宣』読者の親が育てている子供です」と
言いたかっただけらしい。けれども、
「この子は小林先生のDNAを受け継いでおります!」
と明言されたら、もっと深い、もっと衝撃的なドラマを
想像してしまうのが世間というものではなかろうか?
泉美さんは、わしが昔から付き合っていた愛人が、実は
「ゴー宣道場」の門弟として、毎回わしに会いに来ていて、
とうとう「あの時の子がこんなに立派に育っています」と、
紹介しに来たと思ったらしい。
よしりん企画の時浦が、門弟の女性に恋をして、女性の
方から籠絡されて、ついに結婚してしまった事件があった
ばかりだ。
わしなら門弟女性とすでに子供まで作っていたと思われても
仕方がない。
だがわしは時浦のように公私混同する男ではない。
「ゴー宣道場」は公論の場である!
愛人が隠し子を連れてくるようなドラマは起こらないだろう。
ああ、恐かった。